cяimson moon 赤い月 extra
「教室で待ってよーゼ。
入れ違いになっても困ンだろ。
…
どーした?」
袖から手を離した景時に、薫は目をやる。
そこにカワイイ子犬はいなかった。
鋭い眼光。
引き締まった頬。
固く結ばれた唇。
それは狩る側の者。
それは… 狼。
神経を研ぎ澄まして獲物を狙う獣のような目で、廊下の端にある階段の方向を凝視する。
「うさぎ!!」
景時は弾かれたように駆け出した。
後を追う薫も、大気が孕む異変に気づく。
いつも感じる、高貴だが威圧的で狂暴な鬼気ではない。
揺らいでいる。
震えている。
コレは… 恐怖?
滅多にないはずの危険に、うさぎは曝されているのかも知れない。