cяimson moon 赤い月 extra

「「蹴れ…??」」


景時はうさぎをそっと降ろし、顔を覗きこんだ。
彼女は俯き、両手で自らの躰を抱いて震えを押さえようとしている。


「うさぎ、それは人間なの?」


「人…の筈じゃ。
気配も…
そなたと同じ服を着ておった。
だが、気味が悪い。
皆汗をかき、息を荒くして…
来た!!!」


うさぎが景時の背に隠れ、彼のブレザーを小さな手で握りしめた。

お世辞にも俊敏とは言えない足音が、バタバタと聞こえる。

『踏め』『蹴れ』
しかも群がって。

なんの意味があるのだろう。
聞いたことはないが、チカラを奪う儀式でもあるのかも知れない。

さっぱり要領を得ないが、強敵であることは間違いない。

鬼神がここまで怯えているのだから。

生憎、バジュラは持ち合わせていない。
だが、殻がヒトの躰なら取り押さえられるか?

景時と薫は、鋭い視線を交わして頷き合った。

< 39 / 212 >

この作品をシェア

pagetop