cяimson moon 赤い月 extra
「どうして?
男の子だって、選り取りみどりよ。
今だってそうでしょうけど…
もっとたくさんの男の子が、あなたに夢中になるのよ?」
「やはり、意味があるとは思えぬ。」
女神が、美しいが彫像のように硬い顔を女に向けた。
「何処の誰とも知れぬ者にどれだけ思われても、なんの意味もあるまい。
生涯ただ一人と決めた男を魂ごと手中に収めることこそ、女の本懐であろう。」
女はその場を後にした。
女神の言葉が胸を去来する。
注目を集めて、持て囃されて…それで何を得ただろう。
女は故郷に恋人を残してここに来ていた。
真面目だけが取り柄の、純朴な人だった。
退屈な男だと思っていた。
いつまでも待つと言ってくれた、ただ一人の人。
あの人の心は、今でも私だけのものだろうか…
女が連絡を断った今でも、必ず年賀状が届く。
もしも、もしも来年もあの人からの年賀状が舞い込んだら…
(返事を出してみようか。)
女は少し笑った。