cяimson moon 赤い月 extra
「暇してるの?
ちょっと付き合わない?」
男が女神に声を掛けた。
「人を待っておる。」
無表情に女神が答えた。
イイゼ。
よくあるナンパだと思ってンだろ。
でも、これを見れば態度が変わるはず。
女神の答えを無視して、男はわざと手首のロレックスを見せながら、SLRマクラーレンを指差した。
「アレに乗って、さ。
ドライブがてら買い物でも行こうよ。
それともメシがイイ?
なんでも好きなモノ買ってあげるし、食わせてやるよ。」
「特に欲しいものはない。」
車と男の顔をチラリと一瞥しただけで、女神は視線を戻した。
あれ?
冗談だと思ってる?
偽物だと思ってるとか?
「プライベートだから名刺持ってないケド、俺、会社経営してンだよ。
テレビにも出てるよ。
見たことない?
ブランド品でも宝石でも、君の望みをなんでも叶えてあげられるよ。」
「そなたに望むことはない。」
女神は動かない。