cяimson moon 赤い月 extra

景時は慌ててベランダに飛び出した。

うさぎを捕まえようと柵に身を乗り出し腕を振り回すが、手が届かない。


「うさぎ、行くな。
てか、裸Yシャツで外行くとか、犯罪だから。
風邪ひくから。
俺が死ぬから。
早く戻って。」


もはや何を言いたいのか自分でも不明。
景時は泣き出しそうな顔でうさぎを見上げた。

夜空に浮かんだうさぎも寂しげに景時を見て、長い睫毛を伏せる。


「許せ、景時…
ぷれぜんとの為じゃ。」


「ドコに… 行くの?」


「とりあえず…崑崙辺りか?」


コンロン?
ドコ、ソレ?


うさぎが銀の流星に姿を変え、瞬く間に景時の視界から消える。


「うさぎ────────!!
行くな─────────!!」


『ぷれぜんとの為』に、呆気ない悲劇の別れ。

うさちゃん…
きっとチベットの山奥にはショップなんてナイよ…

景時は寒いベランダで、涙を流しながら星を見ていた。

< 62 / 212 >

この作品をシェア

pagetop