結婚白書Ⅰ 【違反切符】
ホテルに着くと 扶美子おばさんが
「こっち こっち」と手招きしてるのが見えた。
若い女性 それからもう一人 年配の女性が一緒だ。
おっ 結構美人だよ それに笑った顔がかわいい子だな~
笑った顔が良い子って無条件にいいよな
いかん いかん
今日は何が何でも断るんだ
容姿に惑わされてその気になったら それこそお袋の思うツボだ
挨拶をして席に着くと 話が始まった。
「高ちゃん こちらね 私の同級生の杉村さんと姪の和音さん
同窓会でアンタの自慢をしたら 杉村さんが
私にも自慢の姪っ子がいるのよって
それで アンタのお母さんに話をしたのよ」
「はぁ・・・」
なんて間抜けな相打ち でも 他に答えようがない。
彼女も この話は初めて聞くみたいで 楽しそうに会話に加わっている。
ふぅ~ん おばさん二人を相手に 楽しそうに話をする子だな
媚びてるようでもないし ニコニコと相槌を打ちながら ちゃんと会話してるよ
この子なら 嫁姑の確執なんてなさそうだな
うん? 俺は何を考えてるんだ?
母さんの陰謀に まんまと引っかかるところだったぞ
取り留めのない会話が途切れた頃
扶美子おばさんが 見合いでお決まりの台詞を言う。
「後は 若い人同士でお話をしてね 年寄りは引っ込むわ」
そして 俺と彼女は取り残された。