アイのカタチ

「何もしんねぇのにそこまで言うなよ。俺が本気で好きになった女」


いやいや、違うでしょ。

さっき会ったばかりでしょ。

なんも知んねぇのにって、アンタもあたしの事知らないでしょ?


思わず、イラっときたあたしはテーブルの下で隠れている颯の足をおもいっきり踏みつける。

その衝撃で声には出さなかったが小さく舌打ちをしてきたのは確か。


って言うか、舌打ちしたいのはあたしのほう。


マジ、ありえないんだけど。

あたし、彼女役されてんの?


アホらし。


「何それ…。つか、アンタは本気で颯の事が好きな訳!?」


睨むように向けられた女の視線。

それと同時に隣からツンツンと足を突かれる。


答えろって事?内心は苛々してても何故か口は動く。


「ま、まぁ…」

「はぁ!?まぁって何?颯の事好きじゃなかったら何で付き合ってんの?」

「あ、いや…」

「は?何?好きなの?嫌いなの?」


好きも何もさっき会ったばかりです。なんてさすがに言えないこの状況。

曖昧に答えてしまった所為か、隣にいる颯のため息が自棄に大きく耳に伝わった。


「…好きだから別れたくない」


だからこう言うしかなかった。

早く終わらせる為にそう言うしかなかった。


けど、この言葉はアンタじゃなく、あの彼に言いたかった。

そう、まだ好きなのって、そう言いたかった。

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