アイのカタチ
そしてこのありえない格好のまま着いた先は颯の家であろう一軒家。
ポケットからキーケースを取り出した颯は、そこから家の鍵を出す。
中に入ると誰も居ないのか、静けさがあった。
「髪、乾かせよ」
「ごめん」
「終わったら上に来いよ」
そう言って脱衣所に連れて行かれたあたしは颯にドライヤーを渡され長い髪を乾かす。
鏡に映る自分の顔。
どうしようもないくらいの惨めな顔に思わず顔を顰めてしまった。
指に絡めながらドライヤーの熱が髪に加わる。
暫くして完全に乾ききったのを確認したあたしはドライヤーを切って颯が居るであろう二階にへと向かった。
「…颯?」
どこに行けばいいのか分らずとりあえず声を出して見る。
「あー…、ここ、ここ」
颯の声が聞こえたであろう部屋。
ドアが全開になっている中を覗き込むと、颯はクローゼットの中を探っていた。
「何してんの?」
「何って、お前の服」
「あたしの?」
「だって、それ着て帰んのかよ」
「あー、そっか颯のんだもんね」
「俺のっつーか、学校の男のシャツ着てたらおかしいだろーが」
「あ、そっか」
「けど美鈴が着れるような服ねぇわ。…あ、これでも着とけ」
スッと頭を引っ込めた颯は黒のTシャツを差し出す。
だけど見るからに男物だけど、シャツよりマシか。