アイのカタチ

「つか、何で泣きそうになってんの?」


そう言われて自分でも分かった。

また颯の顔がボヤケテいく。


ここで気を許しちゃうと涙が落ちる。


「…別に」

「ごめん、まだ気持ちわりーの?」


持っていたタバコを消すと、颯は立ち上がりあたしの髪を避けながら首筋を撫でる。


そうじゃ、ないの。

そうじゃ、ないんだよ。


「ううん」


首を左右に振るあたしの頭を颯は軽くポンと叩く。


「じゃあ何?」

「別に」

「お前、“別に”って言葉スキだな」

「別に…」

「ほら、また」

「……」


クスクス笑う颯の手があたしの髪を撫でる。

そして、ギュっと颯はあたしを抱きしめた。




< 59 / 87 >

この作品をシェア

pagetop