アイのカタチ
「あーっ!美鈴いい所にいたっ!」
相変わらず弾ける千佳の声。
学校に着いて即効、昇降口で出くわした千佳に腕を掴まれた。
「おはよ」
「おはよっ!ちょっといい情報があるの」
「いい情報?」
「そう。合コン」
「合コン!?」
思わず声を張り上げてしまった。
「そうそう。相手は大学生っつってたかな?5人5人だよ。美鈴入れて5人揃うの」
「えっ!?あたしも行くの!?」
「当たり前じゃん。もう連れて行くって言ったもん」
「ちょ、勝手に決めないでよ」
「なんでよー!!いいじゃん。美鈴、年上好きじゃん。これでさいい出会いあるかも知んないし、だからさ――…」
一瞬で千佳の声が消えてしまった。
まるで音も何も聞こえない世界に居るんじゃないかって程に心臓が止まる。
着き辺りまで真っ直ぐに広がる廊下を歩いてるのは久し振りに見る颯の姿。
会ってた頃よりも髪の色を落ち着かせた颯の姿。
着崩した制服のズボンのポケットに両手を突っ込む姿は相変わらず変わってない。
こっちに近づいて来る颯は、絶対あたしの存在に気づいてんのに見向きもしない。
そして、スッと通り過ぎた時、懐かしい颯がつけている香水の匂いがフワッと辺りを漂わせた。