アイのカタチ

恐る恐るベンチがある所を覗き込むと、そこには颯の姿がある。

いつものように寝転んで、右腕を額に乗っけてた。


「…颯?」


そう小さく呟いたあたしの声は颯の耳に届いたんだろうか。

即効、返事がないからもう一度口を開こうと思った瞬間、


「久し振りだな。…元気にしてたか?」


口を開いた颯は額に乗っけてた腕をスッと外した。

その久し振りに見る顔に意味もなくドキドキしてる自分が居る。


「うん。…颯、避けないでよ」

「え?」

「ほら、今朝会ったじゃん」

「あー…避けてねぇし。またやっかいな噂飛んじまったら美鈴が傷つくだろ?だから」

「別に、いいのに…」

「で、どした?」

「あー…うん、これ」


そう言って袋を差し出すあたしに颯は身体を起す。


「何?」

「颯の服。前に貸してもらったやつ」

「あぁ。別にいいのに」


その受け取ろうとした颯の左手に思わず視線が止まった。

手の平全体に覆われてる包帯。


今の今まで気付かなかったけど、真っ白で覆われている包帯が自棄に気になった。
< 66 / 87 >

この作品をシェア

pagetop