アイのカタチ

“体調悪いです”


なんて、ありもしない事を言って学校を抜けたのはこのあたし。


靴に履き替えて、出た先には退屈そうに待っているさっきの男。

その男を見て呆れたため息。


…やっぱ帰ろう。


そう思ったのも束の間。

着崩した制服のズボンのポケットに両手を突っ込んだ男はあたしを見た瞬間、


「こっち」


そう言って顎で行く先を指す。


その歩く背後をあたしは膨れっ面になったまま見つめて足を進めた。

と、同時に無意識に動く手。


鞄の中から携帯を取り出したあたしは何気なくその画面を見つめた。


“別れたい”

そう言われたのは昨日。


あたしよりも遥かに上の24歳の彼。高校生とは違って大人びた要素が凄く素敵で好きだった。

でも突然別れを言われた言葉。


まだ心も何も落ちつけていない。


もしかしたら“やっぱ美鈴がいい”って言ってくるんじゃないかって、何か返事が来るんじゃないかって。

だから無意識の内に携帯を見つめてしまう。


メールは消したけど、やっぱ辛い。


逢いたい…

でも、もう逢いたくない。


なんか複雑な気持ち。

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