アイのカタチ
あまりにも密着しすぎた身体。
何の香水か知らないけど、フワッと優しい香りが鼻に漂う。
…でもこの匂いは嫌いじゃない。
だけど、やっぱドキドキなんてしない。
よく聞いたことがある。
初めて見てトキメイタ事があるって。
香水で癒されそうになるって。
だけど今のあたしじゃ全然。
いくらこの男がカッコよくてもトキメキもドキドキってのも起こらない。
あたしの中にはまだあの彼がいて。
でも、もういらなくて…
何が言いたいのか分んないけど、言葉を上手く整理出来ない。
「行くぞ」
何気に掴まれた腕が男の腰に回る。
エンジン音とともに、あたしの長い髪が風に揺られ顔にかかった髪をあたしは開いているほうの手で押さえた。
心地いい風にあたしは空を見上げた。
透き通った空が余りにも綺麗で、
空に羽ばたきたいと願った。
自由になりたいと思った。
何もかも全て、忘れる様に
消しさる勇気が今は
ほしかった。