ブラックコーヒー
バスを降りるために定期を出そうとして…私は固まった。

な……ない…。
なんで!? 乗ったときは確かにっ…!

盗られた…とか!?


焦って涙目になる私に、運転手さんは不審そうな目を向けた。


どうしよう…! 片道600円なんて払えるお金、今持ってないし…。

そのとき、後ろから声がした。



「もしかして、これ?」



振り返ると、私の定期があった。



「あっ…! ありがとうございます!」



ホッとして涙が零れそうになる。



「よかった、そこに落ちてたんだ。」



落ちて……。
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