ブラックコーヒー
バカみたいだけど…望みを、持ちたかった。

渡せたらなんて、淡い幻想を抱えていた。


だから…雪が降り始めた白銀の世界の中に響いた声は、私の幻聴だと思った。




「美由里ちゃん!」




校門の傍ら、頭と肩に雪を積もらせて、傘も指さず…。



「と、うま…さん…?」



何度も呼んで欲しかった。
何度も呼びたかった。

その声で。
この声で。

あなたに。
あなたを。



「美由里ちゃんっ…!」



私は思わず斗真さんに駆け寄った。



「頭と肩…雪積もってるじゃないですか! 手も冷えちゃって…。」
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