ブラックコーヒー

□チューハイの誘惑

3月に入った頃。

外の気温も私たちの関係も、何も変わっていなかった。



「ごちそうさまでした。」



中身を飲み終えたマグカップを斗真に渡す。

相変わらず中身はブラックコーヒーだ。



「うん。あ、そうだ。」

「?」



ゴロゴロする私に目を向けると、サイドテーブルにマグカップを置いた。

かと思うと、かけていた布団を引き剥がして私の肩に唇をつけた。



「ちょっ…!?」

「んー…。」

「いっ…。」



少しの痛みが走って、斗真が私から離れた。



「前につけたやつ、消えかけてたから。」
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