ブラックコーヒー

□浮気現場

その週の金曜日夕方、私は葉山コーポレーションの前にいた。


空はどんよりと暗く、今にも雨が降り出しそうだった。

朝から天気が悪かったのに傘を持って来なかった自分が恨めしかった。



「そろそろ…かな。」



次々と出てくるサラリーマンやＯＬさんを見ながら思った。


斗真…びっくりするかなぁ。
初めてだもんね。


見つけたらまず声かけて、カフェにでも入ろう。

それか斗真の家に行って…で、ちゃんと話そう。


そう心に決めた瞬間、斗真が出てくるのが見えた。



「と…」



声をかけようとして、止めた。