ブラックコーヒー
「…斗真?」



不意に聞こえた単語に、私は目を見開いた。



「…今さ、俺誰といると思う?」



一樹さんの腕から逃れようともがくも、一樹さんはそれを許してはくれない。



「…美由里ちゃんだよ。俺の部屋に2人きり。」



何を言っているかは分からなかったけど、電話の向こうで斗真が何か叫んでいるのが聞こえた気がした。



「…早く来ないと、食べちゃうよ。」



そう言って電話を切った。



「一樹さん…っ、離して…!」

「嫌だよ?」



抵抗も虚しく、私は一樹さんの腕から逃れることができない。
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