ブラックコーヒー
「っ…。」



斗真は一樹さんの胸ぐらを掴んだかと思うと、そのまま一樹さんを殴ろうと拳を振り上げた。

一樹さんは静かに目を閉じた。



「止めて…!!」



体が勝手に動いていたっていうのは、まさにこういうことなんだろう。

私は気がついたら斗真の拳の前に躍り出ていた。



「美由里…!?」

「こんなの誰のためにもならない!」

「っ…。」

「下手したら斗真、仕事できなくなるんだよ!?」



諦めたように一樹さんの胸ぐらを掴んでいた手を放すと、そのまま私の自由を奪っていたネクタイをほどいた。
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