ブラックコーヒー

□家庭崩壊

何もないまま時は過ぎ、5月中旬。
帰りのバスでのことだった。



「美由里…、なんか顔色悪くない?」



心配そうに首を傾げながら杏は言った。

思わず体がビクつきそうになるのをなんとか堪える。



「そんなことないよ。」

「…誤魔化したって無駄よ、あたしには分かるんだから。」

「ゔっ…。」

「…何かあった?」

「んんー…。」



こればっかりは…正直言いたくない。

私は吊革に掴まりながらなんとか笑顔を作る。



「ちょっと…今は言いたくないかなぁ。」

「ふぅん…。」
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