ブラックコーヒー
「……どうせ、行くんでしょ? 渡部のところに。」

「美由里…。」



熱のせいか頭が痛くてちゃんと働かない。



「…もう、いい。」

「は…。」

「渡部のとこでも…どこへでも行けばいいじゃん。」



玄関へと歩き出した私を後ろから抱き締める形で引き留める斗真。



「…待ってて。すぐ戻るから。」



そう言ってさっさと出ていってしまった。

きっと、何を言っても意味を成さないことを分かっていたんだろう。



「…急いで事故ったらどうすんのさ。」



ばか…。



「…強くいなきゃいけないんだよ、私は。」



そう呟いて斗真の家を後にした。
< 319 / 382 >

この作品をシェア

pagetop