ブラックコーヒー
渡部に対してここまで敵意を剥き出しにしたのは初めてかもしれない。

渡部はそんな俺に怯むことなく、いつものあの香水の匂いを振り撒きながら俺に抱きついた。



「私っ…、ずっと…入社したときから坂沼先輩のことが…!」



ずっと、迷っていたんだ。だけどそんな迷い…始めから無駄だったんだ。

俺はある決意を胸に秘めていた。



「…渡部。」



俺は渡部の肩に両手を置くと少し距離を取った。



「坂沼先輩…。」



初めて見たときにはただ可愛い子だとしか思っていなかった。

俺は静かに渡部に顔を近づけた。


そして静かに告げた。



「…付き合いきれない。」

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