ブラックコーヒー
一途で、癒し系で…なんか、『大丈夫だよ』って包み込んでくれそうな子。

ギュッと俺の手を握った新人の女の子。


あえて握り返してなんかやんないんだ。



「一樹さんっ!」



その時、駐車場に大きな声が響いた。
透き通った、きれいな声。

声の主を振り返れば、その子は肩で息をしながら繋がれた俺らの手を睨み付けた。



「何してるんですかっ。」



なんだっけ、咄嗟に名前が出てこない。

えっと…あ、思い出した。



「どうしたの? 渡部ちゃん。」



やっと絞り出した名前を口にすると、彼女は眉間に皺を寄せた。
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