ブラックコーヒー

□虚しさのループ

「ここでいいです、ありがとうございます。」



家の近くで私はそう言った。

さすがに家族に見られるわけにはいかない。



「了解っ。じゃあはい、これ。」



車を止めた斗真さんは、私にお金を渡した。

3万円…。



「こんなにもらえません…!」



無論自分を安売りするつもりはないけれど、それでも3万は気の引ける額だった。



「いいの。最初だからね。」



また、“最初”…。



「…じゃあ、初回料ってことで…。」

「うん。」



私はお金をそっと鞄にしまった。
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