ブラックコーヒー
斗真さんと別れて家に入る。

『ただいま』は言わない。
最後に言ったのがいつかも分からない。


夕飯の7時には間に合った。


部屋に直行すると、私はさっきもらった3万円を丁寧に茶封筒に入れた。

そしてそれを机の中に仕舞う。


…普通の高校生なら喜ぶ額。

だけど…私にとってはある感情を生むものでしかなかった。



「…虚しいね。」



思ってたより、虚しかった。

確かに心の穴は埋まらなかった。むしろより深くなった気がする。


お金を渡された瞬間…現実を突きつけられたような気がした。

これは感情のない、欲求を満たすためだけの“援交”なんだ、って。
< 44 / 382 >

この作品をシェア

pagetop