ブラックコーヒー
「斗真さん…?」



驚いて目をぱちくりさせる私に、斗真さんは触れるだけのキスをした。



「じゃ、おやすみ、美由里ちゃん。」



放心した私を置いて、斗真さんはあっという間に行ってしまった。



「…なんで?」



ホテルの外では、ろくに私に触れることすらしないのに。

斗真さんが…分からない。



あなたは誰と私を重ねているの?

何が…したいの?


分からない。



「雪…。」



空から舞い落ちてきた雪に手を伸ばす。

斗真さんも…見てるんだよね、この雪を。


近くにいるはずのに、こんなにも遠い。
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