ブラックコーヒー
挑発的に微笑むと、一樹さんは肩をすくめた。



「斗真より高くねぇ?」

「斗真さんは特別料金。」



毎回3万って決して安くはないとは思う。
すぐに貯金なんかも底をつくだろう。



「いいよ。」



いつの間にかシートベルトを外していた一樹さんは窓に手をついて、私の顔を覗き込んでいた。



「俺ならもっと高い額、出してあげる。」



そう言って目を閉じて近づいてくる。

一樹さんの吐息が唇にかかる。
あと少し…。


そっと目を閉じた。



『心の準備はできた?』



「い、や…っ!」
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