ブラックコーヒー
私は咄嗟に横を向いた。
涙が滲んでくる。


斗真さんのときは嫌じゃなかった。

あの優しさが嬉しかったから。
優しかったから。


それ以上に――……



「美由里ちゃん…?」

「嫌…。」



斗真さんじゃなきゃやだ。

そんなの…



「よかった。」



気が付けば一樹さんは運転席に戻っていて、柔らかく微笑んでいた。



「美由里ちゃんがバカな女じゃなくて。」

「へ…?」

「…安心したよ、君がただのお金目当てじゃなくてさ。」

「あの…?」



一樹…さん?



「試しちゃってごめんね?」
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