12センチの君
 

 床に落ちたはずの写真立てのガラスが割れる音が嫌に遠く聴こえて、自分の身に何が起こっているのかを悟る。


 …あぁ、ようやく。ようやく私は、お前の元へ逝けるよ。

 重くなる瞼に身を任せてゆっくりと目を閉じれば、心地良い闇が身体を包み込む感覚に襲われた。不思議と恐怖感や不安は感じなかった。むしろ私は、ようやく君の元へ逝けるのだと幸せさえ感じていたのだった。



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