やわらかな夜
その高い声は、もはや俺を誘っているとしか考えられない。

そんなことを思う俺は、自意識過剰もいいところだ。

ましてや、失恋した後だって言うのに。

「――あかり…」

「――シュージ…あっ!」

もう、限界だ。

「――シュージ…!」

俺を呼ぶあかりの声に、求めるように震える躰。

「――あかり…!」

俺は叫ぶようにあかりの名前を呼んで、限界に達した。

その直後にあかりの躰が大きく震えたことから、彼女も限界に達したんだと思った。

荒い呼吸をしている俺に震えているあかりの細い手が伸びてきて、汗で貼りついている俺の前髪にさわった。

「――シュージ…」

消え入りそうなあかりの声と同時に、唇にぬくもりが触れた。
< 13 / 111 >

この作品をシェア

pagetop