やわらかな夜
「今日夫は出張でいないの」

「寂しいからきて」

そうなるはずだった俺と有村の出来事は、終わらなかった。

有村はそばにいる夫よりも俺を求めた。

俺はただ彼女に求められるがまま、彼女と何度も躰を重ねた。

セフレ。

夫の身代わり。

自分の立場がそんなものだと言うことは、俺自身が1番理解していた。

理解していたはずだったけど、俺はいつの間にか有村に恋をしていた。

いつになるかはわからないけど、彼女は夫と別れて俺を選んでくれる。

そんな自信すらも、俺の中に湧いてきた。

なのに、俺の自信は有村が夫の子供を妊娠したことによって無残にも砕かれた。

 * * *
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