やわらかな夜
「ただいま」

家に帰ると、そこにあかりの姿はなかった。

テーブルに視線を向けると、夕飯の用意がされていた。

「あいつ、マメだな」

週に1回か2回程度だけど、あかりはどこかへ出かけていた。

留守にする時、必ずテーブルのうえに用意されている夕飯。

あまりの献身さに、俺はつい笑ってしまった。

ただ、あかりがどこかへ出かけているかは聞かなかった。

彼女も彼女で、何か事情があるのだろう。

あかりがどこへ行こうが、俺には関係ない。

その日もあかりが用意してくれた夕飯を済ませ、風呂に入り、ぼんやりとテレビを見ていた。

ガチャッ

玄関のドアが開いた。
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