やわらかな夜
「――……ージ。

……ュージ。

シュージ!」

俺の名前を呼ぶ声にハッとなって目を開けると、あかりが目の前にいた。

「もう閉店なんだけど」

そう言ったあかりに、
「――閉、店…?」

俺は店内を見回した。

この場にいる客は俺1人だけだった。

「ああ…すまない、すぐ帰るよ」

椅子から腰をあげようとした俺に、あかりの両手が伸びてきて俺の頬を包んだ。

「何かあった?」

あかりに顔を近づけられた。

「――えっ…?」

あかりの瞳に、マヌケな顔の俺が映った。
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