やわらかな夜
何であかりは、そんな顔をしているのだろうか?

まるで俺がかわいそうだとでも言うような顔をして、あかりは俺を見下ろしている。

「――何で男の人は、何でもお金で解決しようとするんだろう…」

あかりの唇が動いて、呟いた。

「――えっ…?」

スッと、それまで俺をおおっていた躰の重みがなくなった。
 
あかりが離れたからだ。

「――あかり…?」

余韻でまだクラクラする躰を感じながら、俺は上半身だけ起こした。

あかりは俺に背中を向け、玄関に行こうとする。

「どこに行くんだ?」

俺はあかりの背中に向かって問いかけた。
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