やわらかな夜
有村がいなくなっても、俺は椅子に腰を下ろしていた。

これで本当に、彼女と縁が切れた。

息を吐いたその時、先ほどまで有村が座っていた席に誰かが座った。

「――シュージ」

俺をそんな風に呼ぶヤツは、ただ1人だ。

「――あかり…」

何日かぶりに、あかりが俺の目の前にいた。

「その顔をしていると言うことは、事態が終わったと言うことかしら?」

俺はどんな顔であかりを見ていたのだろう?

そう思いながら、俺は首を縦に振ってうなずいた。
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