やわらかな夜
喫茶店から出た俺たちは肩を並べて一緒に歩いた。

歩いているけど、あかりと手は繋がなかった。

そりゃ、そうだろうな。

俺たちは手を繋ぐほどの関係じゃないのだからと、俺と彼女の空いている距離を見ながら俺は思った。

「ねえねえ、何食べる?

焼き肉?

お寿司?

イタリアン?

中華?」

あかりが楽しそうに俺に問いかけてきた。

「そうだなー…」

そう言って俺が考えようとしたその時だった。

「――あかり?」
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