やわらかな夜
「ちょっと、おにーさん大胆だね」

投げられた躰を起こそうとした彼女に、
「修司」

俺は言った。

「へっ?」

彼女はマヌケな声を出して、わからないと言うように首を傾げた。

「滝本修司(タキモトシュウジ)。

俺の名前はおにーさんじゃない」

どうせ一夜だけの関係だ。

だから、自分の名前なんか名乗る必要なんてない。

だけど、俺は何故か彼女に自分の名前を言っていた。

「――シュージ…」

彼女が名乗ったばかりの俺の名前を呼んだ。

「お前は?」

そう聞いた俺に、
「――あかり…」

彼女――あかりが名乗った。
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