やわらかな夜
「――エゴなんかじゃない…」

俺は呟いた。

これらの気持ちは、俺のエゴじゃない。

心から思っている自分の気持ちだ。

だから、もうあかりを手放したくない。

有村のようなことになるのは、ごめんだ。

ちゃんと自分の気持ちを伝えて、この腕にあかりを抱きしめる。

もう、大切な人を手放すのは嫌だから――。


その翌日。

俺は会社が終わると、あかりが働いているバーに足を向かわせた。

もしかしたら、ここにあかりがいるかも知れない。

いなくても、あかりに関する情報が見つかるかも知れない。
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