やわらかな夜
そんな期待を胸に抱いて、俺は店を訪ねた。

「ああ、オニーサンまだ開店してないよ?」

ドアを開けようとした俺に、後ろから声をかけられた。

振り返ると、ほうきとちりとりを持った背の高い男だった。

俺も高い方の部類に入ると言えば入るが、彼は俺が見あげなければならないくらい高かった。

そう言えば、どっかで見たような気がする。

いや、気のせいか?

「ちょっとー、俺の顔に何かついてるー?」

男が不思議そうに首を傾げた。

すぐに、
「それとも俺がいい男だから見とれてたとか?」

男はヘヘッと照れたように笑った。
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