やわらかな夜
「――あの…」

「んー?」

「あかりさんは、いらっしゃいますか?」

声をかけた俺に、男は驚いたと言うように目を見開いた。

男の目はコーヒー色だった。

――えっ、コーヒー色?

「えー、何?

オニーサン、あかりのファン?」

やけに嬉しそうな様子で男が言った。

「えっ…」

俺は次の言葉に困った。

「否定しなくてもいいのよー。

あかりちゃんのファンはたくさんいるんだからー。

ウチの看板娘なんだからー」
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