やわらかな夜
男は手をフリフリと上下に振っていた。

彼の独特のテンションに、俺はついて行けない…。

「でもちょっとあかり、気分悪いみたいでさー」

「気分を、ですか?」

そう言った俺に、
「お見舞い行く?

オニーサン、いい男だからあかりも喜ぶかもよ?」

男がニヤニヤと笑いながら言った。

そう言った彼に、俺はためらった。

さっきまであかりを連れ戻すことを考えていたのに…。

予想もしなかった状況に戸惑っていた俺に、
「リー兄」

聞き覚えのある声が俺の耳に入ってきた。

「あら、あかりちゃーん」

男はヘラッと笑うと、あかりに向かって手を振った。
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