やわらかな夜
俺とあかりの視線がぶつかった。

「あかりちゃん、もういいの?」

そう言った男に、
「まあ…」

あかりはどこか冴えない様子だった。

いざ会ったとたん、俺は困った。

さっきまで連れ戻すことを考えていたのに…。

お見舞いの次はご対面かよ…。

状況が状況に俺は何も返せない。

俺は一体何がしたいのだろう?

何がしたくて、わざわざ訪ねにきたのだろう?

「シュージ」

あかりが俺の名前を呼んだ。

「えっ、知り合い?」

男が戸惑っている。
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