やわらかな夜
あかりは俺の腕をつかんだ。

「――えっ、ちょっと…」

聞く時間を与えないと言うように、あかりが俺を引っ張った。

「えっ、あかりちゃん?」

男も訳がわかないと言うように目をパチクリさせた。

やっぱり、瞳はコーヒー色だった。

あかりに腕を引っ張られて、俺は店の裏側に連れて行かれた。

ドアの横には“久世”と言う表札があった。

あかりはドアを開けると、俺を中に入れた。

ワンルームの部屋に、ソファーとテーブルとテレビとキッチンがあった。

殺風景と言うか、シンプルな部屋だな。

そう思った俺に、
「シュージは、優しいね」

あかりが言った。
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