やわらかな夜
あかりは俺を見つめた。

「シュージは優しくて一途で…あたしみたいなあばずれ女よりも、もっといい子と幸せになった方がいいと思った。

シュージのためを思ったから、逃げたのに…」

「――あかり」

俺はあかりに歩み寄ると、彼女を抱きしめた。

あかりが驚いたと言うように目を見開いたけど、すぐに俺の背中に彼女の両手が回った。

「――俺は…」

小さな子供に話しかけるように、俺は言った。

「俺は、あかりがいいんだ。

わがままだろうと、エゴだろうと……俺は、あかりのそばにいたいんだ」
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