やわらかな夜
俺の背中に回しているあかりの両手が震えている。

「本当は、寂しかった…。

本当は、つらかった…。

あたし…」

「もういいんだ」

俺はあかりと目をあわせた。

コーヒー色の瞳は、濡れていた。

「もう充分だ」

俺がそう言ったのと同時に、濡れた瞳が優しく微笑んだ。

「――シュージ、会いたかった」

そう言ったあかりの頬に俺は手を伸ばすと、涙をぬぐった。

顔を近づけようとしたその時、
「あーかーりちゃーん…って、ギャッ!?」
< 88 / 111 >

この作品をシェア

pagetop