やわらかな夜
「――あっ…」

俺とあかりの声が重なった。

「リー兄…」

あかりの声に黒いものが含まれていたのは、俺の気のせいだろうか?

「アハハ、お取り込み中だったのねん。

ごめんね~、あかりちゃん許して~。

お店始まっちゃうからじゃーねん」

彼は笑いながら言った後、俺たちの前から逃げ出した。

「ごめん、バカ兄貴のせいで…」

あかりは呆れたと言うように俺に謝った。

「あ、ああ…」

俺は何と返せばよかったのだろうか?
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