やわらかな夜
「シュージ」

あかりが俺の名前を呼んだ。

「んっ?」

「店が終わったら、一緒に帰ろ?」

そう言ったあかりに、
「ああ、待ってる」

俺は返した。


「まさか、あかりの彼氏だったとは思いもしなかったなあ。

あかりちゃん、そんなこと一言も言ってなかったのに。

彼氏の「か」の字もなかったのよん?

お兄ちゃん悲ピー!」

さっきから俺はあかりのお兄さんの相手をしていた。

あかりと一緒なのはコーヒー色の瞳だけで、中身は全くと言っていいほど違っていた。
< 90 / 111 >

この作品をシェア

pagetop