太陽と月。
この世界には上から神、精霊、妖怪、人間とがあり、私はそのうちの妖怪に属する。
まず神仕(シンシ)というのは書いて字の通り、神に仕える者の意である。
その神仕になれる者は極々限られていてまず普通の人間はなれない。
巫女なら別だろうが、普通の人間が「はい今日から俺神仕だから」という訳には行かない。
神仕になれる者というのは神を敵の魔の手から守れる力があり、精霊もしくは人間からの人望がある者に限られてくる。
そして神の敵というのが私たち妖怪である。
私の主はどうも、妖怪の頭領である私を神仕として丸め込めば妖怪達も彼に従うと考えたらしい。
そういう事もあり、私は妖怪の中でも最上位の強さと人望があったため、この神仕とかいう面倒な仕事を押し付けられた。
「ああ、本当に面倒な仕事を押し付けられたものだ」
口ではそう言いつつも。
何だかんだ思い浮かぶのは彼とのはちゃめちゃな楽しい日々だった。
この森の守り神であった彼の名前は知らないが、彼はまるで子供のようだった。
‘藍妃! 余は煎餅なるものを食ってみたい!’
‘…私に買ってこいと? 変化(ヘンゲ)できるんですから木霊にでも行かせれば…’
‘ああ、藍妃! 人はいい! 人はいいぞ!’
‘ああそうですか。人の話を聞かないあなたもなかなかにいい性格してますよ’
‘余は神ぞ? そなた一体どの口を…’
‘…神ならさっさと起きてくださいいつまで駄々こねてるんですか。あなた、寝起きの悪さで一等取ってどうするんです’
ぷっ。
笑える。