秘密だよ?~ピアノとバスケそして君~
それでもなんとか笑顔で送ってやるんだって、

気力を奮い立たせていた。

おでこにあたりから冷たい汗が湧き出してくるのを感じた。

嫌な予感に包まれながら、

大丈夫だと何度も頭の中で復唱した。


千葉は、挨拶をして、学校を後にするらしい。


みんなと握手しながら、一言ずつ交わしていく。


ぼくの番だ、

笑わなきゃ、笑って送り出さなきゃ


その使命感が、痛みに耐えながら足を踏ん張って立ち上がらせた。


でも、

立ち上がったと思ったのはぼくだけで、

床をかすめた足はガクッと支えることなく、

そのまま机をなぎ倒し床に倒れた。


視界の千葉がなにか叫んでいる。


音のない世界、

体中の血液がお腹の周りで大渋滞している。


ズキンズキンと音がする。


それ以外の音は聞こえなくなった。


『千葉…ごめん』


言葉になっただろうか…

そしてぼくは意識を手放した。

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