秘密だよ?~ピアノとバスケそして君~
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「逃げなかったんだ。感心感心!」


朝早く、羽鳥くんはあたしを迎えに来た。


「チケット、頂戴。

 別々に行きたいんだけど?」


誰かに見られたくないと思った。


連絡は取ってないけど、

あたしはたかちゃん以外の人と、

噂とかされるのは嫌。


中学の時代には、

羽鳥くんとあらぬ噂をたてられて散々だった。


「無理、これペアチケットだから。


 まさか、俺に行くなとか言わないよね。


 一応、気を使って、

 安土が人目を気にすると思って早めに来たんだけど?」


「し、しょうがないわね。」


あたしの心の声を読まれちゃったのかと思うような返事に、

ドキドキした。


本当のところ、

たとえ、チケットを取れたとしても、

一人で果たして見に行けたかどうか?


途中で引き返してしまう可能性は大だった。


多分行かずに、膝を抱えて部屋にこもるとかしそう。


抽選で外れてほっとしてたところがあった。


「行こうぜ。」


「うん」


羽鳥くんのことはなんとも思ってない分申し訳ないけど、

今は羽鳥くんの強引さがありがたい。


今のあたしは、ひどく後ろ向きだから。



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